50度開先標準化
発刊に際して
発刊に際して【2015年度】
わが国の鉄骨造の大型化・高層化に伴う設計の多様化、そして構造の複雑化が顕著となった1980年代当時、中間部材加工製品の一つであるビルトH形鋼が大きくクローズアップされ、鉄骨ファフリケーター業界においても生産性の効率化などの観点から、ビルトH形鋼の製作に外販専業メーカーを起用する動きが活発となった。その品質の確保と役割がますます重要となるなかで、外販専業メーカーが結集し、1984年に西日本地区でビルトH協議会が、1991年に東日本地区で東日本溶接H工業会がそれぞれ発足した。両団体は、発足当初から独自の「工場認定制度」を導入し、品質確保に取り組んできた。1995年の阪神・淡路大震災や2000年の建築基準法改正という流れのなかで、中間加工製品への品質管理、なかでも外注管理基準が大きな関心を集めることになり、ビルトH形鋼の品質保証体制の確立を目指し、両団体の工場認定制度を統一して、一本化を図り、2000年に全国ビルトH工業会が設立した。併せて、それまでの自主審査から、社会的により信頼性のある第三者機関による認定制度への移行を決定し、鉄骨建設業協会、日本鉄骨評価センターと協議し、翌2001年から「溶接H形鋼工場認定制度」がスタートした。
「溶接H形鋼工場認定制度」は、認定の範囲や取扱鋼材で、「A」「AA」のランクに区分され、学識者による厳格な審査が行われ、さらに合格工場に対しては5年間の有効期限内に資格者や設備等の管理体制に変更がないか審査する中間期審査を2004年から実施している。2013年からはサブマージアーク溶接の確認試験を必須条件とし、鉄骨製作工場の大臣認定制度との整合性を図る意味合いで新認定「AAA」が追加された。
ビルトH形鋼のサブマージアーク溶接は、従来からガスシールドアーク溶接用に定められた開先基準をサブマージアーク溶接に適用して施工しているのが実状であり、課題であった。この議論は以前から存在していたが、全国ビルトH工業会では4年前から45度、50度、60度の異なる開先角度を比較検討して、入熱や歪みなどの施工上の問題のほか、外販専業メーカーによるビルトH形鋼の品質および生産性を検討した結果、50度開先が最も適しているとの結論に至り、50度開先サブマージアーク溶接の標準化に向けて施工試験を行うことになった。
全国ビルトH工業会独自の施工試験を、第三者的立場で判断することが必要と判断し、2014年にAW検定協議会に協力を依頼した。これに対応するため、AW検定協議会では特別委員会としてBH/SAW開先標準化検討委員会(森岡研三委員長)が設置され、施工試験要領の検討から各工場での施工試験立会いおよび試験結果の確認まで細部に渡り、指導を受けた。全国ビルトH工業会会員31社中22社(24工場)が施工試験を行い、ビルトH形鋼の50度開先サブマージアーク溶接の溶接施工要領を確立し、その結果を「ビルトH形鋼サブマージアーク溶接50度開先標準化に向けての施工試験結果報告書」として、とりまとめて翌2015年に発刊した。
さらに昨年度、施工試験への準備不足や工程の問題等の理由で受験できなかった会員工場のほか、必須以外のオプションに試験範囲を広げる会員工場を対象にAW検定協議会東日本の指導と協力のもと、第二回となる施工試験を実施した。結果的に全国ビルトH工業会会員31社全工場(33工場)が必須項目で合格の成果を得ることができた。また、第二回施工試験では鉄骨建設業協会、全国鐵構工業協会の会員も参加し、重みを増した。
本書は、全国ビルトH工業会がこれら2回に及ぶ施工試験の結果を報告書としてとりまとめたものである。全国ビルトH工業会としては、50度開先サブマージアーク溶接の普及に向けて、今後とも研究と議論を重ね、活動していきたい。
今後も建築鉄骨業界において、全国ビルトH工業会の技術力、品質のさらなる向上と、信頼されるビルトH形鋼製品の供給と社会的地位の確立に向けて全力で取り組みたいと考えている。
最後に、施工試験にあたりAW検定協議会の各委員の方々には多大なる、ご協力を頂き深く感謝致します。
2017年1月
全国ビルトH工業会
会長 河本 龍一